廃用性萎縮（はいようせいいしゅく）を避けよ!!
| ニーハオトンシン 2009年７／８月合併号 医学用語に『廃(はい)用性(ようせい)萎縮(いしゅく)』というのがあります。これは主に整形外科の領域でよく使われている言葉です。腕、大腿、下腿、あるいは股関節などを骨折したり、間接が炎症をおこしたとき、治療のためギブスを巻いて患部を固定します。すると、１ヶ月ぐらいで巻かれた部分の脚がかなり細くなっています。 一般には下肢骨折でも、完全に治るまで二ヶ月ぐらいかかりますから、折れたところは治っても、その間、筋肉を使っていなかったために、以前からは信じられないほど細い足になってしまいます。これを専門的には、『廃用性萎縮』と呼んでいるのです。 |
| このように、筋肉は日常使っていないと確実に萎縮しますが、それは四肢だけに限りません。より注意しなければならないのは、脳のほうも使っていないと同じような廃用性萎縮が生じるということです。 とくに脳の廃用性萎縮は、四肢の廃用性萎縮と違って、一見、分かりにくいので、忘れられることが多いのです。これはあらゆるスポーツや趣味、遊びにまで共通することで、やらないでいると、人間の躰はその状態に馴染み、いわゆる『やらな癖』がつくのです。それは若い時にもよくあることで、一時、狂ったように麻雀ばかりやっている。あるいは野球やゴルフに熱中する。 さらには映画が大好きで毎週観る。歌舞伎とか芝居が好きで毎月、欠かさず観に行っていたのが、何かのきっかけで中断していると、やがてやらなくても、観なくても平気になってくる、いわゆる『やらな癖』がついてしまいます。 このように、人間は易(やす)きにつくというか、一度やらずに休んでいるとやるのが面倒になってきて、やらなくても平気になってきます。それでも四肢の場合は、 細くなっているのが一目で分かるので、ギブスを取った時点からリハビリテーションを行ない、機能の回復訓練をさせられるので、ことさらに注意をしなくても筋力は次第に戻ります。 |
| しかし、『頭のやらな癖』は外からでは分かりにくく、とくに強制されることもないために、やらないまま過ごしているうちに、さらにさらに能力は落ちていきます。 とくに高齢になればなるほど、この易(やす)きにつく癖がつきやすく、その状態に早く馴染んでしまいます。そして、年齢を重ねれば重ねるほど、元の状態に戻るのは難しく、不可能になるのです。 この廃用性萎縮は、恋愛においても同様に、いやそれ以上に強く現れてきます。若い時は、異性への好奇心が旺盛で性欲も強く、美しい女性を見るとすぐ近づきたくなり、深い関係になりたいと願います。しかし歳をとるにつれて、もうこんな歳だから穏やかにしていた方がいい、今さら恋愛など恥ずかしい、という思いと共に、そういう欲望を自らおさえ、諦めようとします。 |
| とくに中年以降は、会社が忙しいとか、企業倫理に縛られて恋愛沙汰などやっている暇はない、と思い込むうちに、恋愛感情から遠ざかってしまいます。 そういうことはいけないことだ、という意識が頭に刷り込まれ、そういうことをしない方が楽だと、自分に言い聞かせているうちに『恋愛しない癖』が根付いて、女性を見ても素通りしてパスするようになってきます。 このような毎日を送っているうちに、頭の廃用性萎縮は着実に進行し、恢復不能になってしまいます。実際、今さら異性に好意をもっても、どうせ駄目に決まっている、という思い込みが先行し、結果として上手くいかないことばかり増えてきます。このように諦めと殺風景な現実とが交互に訪れ、負のスパイラルに入ると、ますます『やらな癖』強まり、全てが億劫になってしまいます。 こういう状態が続くと、やがてその人の生活は潤いのないものになり、さらには色気を失い、華やぎを失った人生に堕ちていくだけです。外見的にも実年齢以上に老けて、一見して、さらにおじさんぽく、あるいは、おばさんぽくなるだけで、ここまできたら、頭の廃用性萎縮はかなり重症と言ってもいいでしょう。 |
| いずれにせよ、歳と共に何事も面倒くさがり、ぼんやり時を過ごすことが一番もったいない。それこそ、せっかくの人生を無駄に過ごしていることになるのです。何かを求めたり、ときめいている限り、その人は青春時代にとどまっているのです。 何もしないより悪くなることはないのですから、しているということ自体が、心身の健康を増進させ、若返らせるのです。 もし、ギブスを巻いたまま、細くなった手足や、使わずに弱った躰を見たら、思い出して下さい。放っておけば、自分の頭もあのように萎縮して、前向きの意欲が失われるのだということを。あなたが自分の頭に、知らず知らずにはめてしまっているギブスを外して、本来の能力と機能を取り戻してみてください。 渡辺淳一著『熟年革命』より |
| 私は、脳梗塞を患い、以前より不自由なことがたくさんあります。しかし、病気になる前よりも生きること、人生を楽しむことに対して、貪欲になっています!!!皆さんの人生も・・・いろんなことがあると思いますが、自分の最期に『楽しい人生だった』と思えるよう・・・有意義な人生を送って下さい。 薬剤師 岡部 健治 |
